技 術

今日における九谷の焼き物産業の一担い手として、伝統工芸士の持つ技術により、量産品とは思えない豊かな表情を創り出すことを可能にしています。

ここでは、素地づくりの技術用語について紹介しています。

九谷焼の制作工程

用語説明など

透光性

透光性磁器土【粘土】白土。光を通す透光性が高く、焼き上げた際の透明度を追求した粘土です。非常に白く美しい。九谷伝統の技。

圧力鋳込み

圧力鋳込みは、機械で圧力をかけ鋳込む方法。型のつくり方に技術が求められるため、型製造の専門家へ依頼する場合もあります。成型の方は上型と下型にわかれており、その隙間に泥漿を圧力ポンプで送り込みます。乾燥も早く、短時間で型から製品を取り出せるため、製作時間の短縮、泥漿の無駄もなく、量産が可能です。

泥漿鋳込(流し込み鋳込み)

坏土を水に溶いた鋳込み土(泥漿)を用いて成型する方法。複雑なデザインの製品を制作することができます。型は複数の部品を組み立てて使用されます。部品は太い上部なゴムのベルトで隙間のないように組立てます。型は主に石膏で、中は空洞になっています。流し込まれた泥漿の水分を吸収し、1時間で何ミリという厚さに固定され、余分な泥漿は流し出します。型から離れやすくするためと製品の内面が滑らかに仕上がるようにするため、うつむけて数時間から半日放置し乾燥させます。

泥漿鋳込みは、泥漿を大量に必要とするため、小物や複雑な形の置物の製作に適した製法といえます。

素地とは

通常では製作を終えたと考えられる青白地の陶磁器ですが、九谷焼では素地(きじ・そじ)と呼んでいます。

陶磁器としては1個の完成された製品ですが、上絵付けを特徴とする九谷焼では、上絵付けされた和絵具が絶対に剥落しないという特質を備えてなければなりません。

泥漿

坏土を水に溶いたもの。鋳込み土とも言われます。

花坂陶石

小松市花坂町で産出される花坂陶石は、江戸時代後期(19世紀初頭)に発見されました。白山舌状台地の各地から発見されて使用された前出の陶石が次々と枯渇するなか、花坂陶石は使用されてはじめてから200年余りを経た今も、量的にも質的にも石川県内の陶磁器産業を支えています。下記成分表参照

化学組成 石川県工業試験場実施
Sio2 (石英) 76.13%
AI2O3 (酸化アルミナ) 15.70%
TiO2 (酸化チタン) 0.06%
Fe2O3 (酸化鉄) 0.60%
CaO (酸化カルシウム) 0.38%
MgO (マグネシウム) 0.38%
K2O (酸化カリウム) 4.29%
Na2O (酸化ナトリウム) 0.19%
MnO (酸化マンガン) 0.00%
P2O5 (燐酸) -
Ig.loss (灼熱減量) 2.69%

タタラ

坏土を板状に伸ばしたものをいいます。手捻り成型に使用される材料。タタラ成型では、型にタタラを被せる型打ちや板づくりで組み立てるなど、成型に広く使用されています。

轆轤

回転台のことをいいます。回転する円形台(轆轤)上の中央に坏土を置いて回転を与え、その回転力を利用して円形の皿や壷類をつくりだします。轆轤成型は、別名水引きとも称されます。

型打ち

手捻り成型の一つで、タタラを使用し成型する際に型を用いる事。型は素焼きされた土型を用います。型にタタラを被せ、余分な部分を切り取り型から外せば仕上がります。

上絵付け

陶磁器に低下度(約800℃~900℃)で焼き付ける和絵具を使用して描彩することをいいます。この陶磁器着画の技法こそ九谷焼の真髄といわれています。着画の技法には上絵付けと下絵付け(染付)があります。

染付(下絵付け)

唐呉須(とうごす)という下絵具を使用して素焼きの素地に絵を描く技法。染付のみの九谷焼は「藍九谷」と呼ばれています。

原型

型をつくるためのもの。通常粘土などで作られ、近年は3Dデータも用いる。粘土で作る場合、収縮率を配慮し大きめに作る場合があります。

同じものを複数個つくるため、原型をもとに作られる型。成型方法により型の材質や形状は異なります。

型子(ケース)

型の型。一つの型で約50個程度成型可能だが、型がすり減ったり、目減りするため、量産する場合は型の型を作成する必要があります。

素焼き

成型した坏土を乾燥させて1回目の焼成をしたもの。染付は、この素焼きの状態で絵付け(下絵付け)します。

釉薬(ゆうやく・うわぐすり)

素地の表面を透明なガラス質で覆うための合成物。

九谷焼では上絵付が絶対に剥落しないことが必要不可欠なため、素地に用いられる釉薬は、上絵付に用いられる和絵具を考慮した特殊なものが用いられています。

本焼成

九谷焼の素地づくりの最終工程で行われる2回目の焼成のことをいい、本窯ともいわれます。

下絵付けを行わない素焼き製品はそのまま釉薬を施して2回目の焼成(本窯)を行います。

上絵付を行わない製品や染付の製品はこの本窯で完成した製品となります。

参考文献:正和久佳著 伝統的工芸品シリーズ「九谷焼」理工学社2001.3.20第1版発行 他